選択肢を捨てることで交渉を有利に進める

交渉において複数の選択肢があることは有利に作用する場合が多くなります。例えば、メーカーA社がB社から部品を調達するため交渉しているとしましょう。A社にとってその部品が必要不可欠で、かつそれを供給できるのがB社だけだとすると、A社はB社に対して強気で交渉を進めにくいですね。交渉が決裂すればA社は困った状況に陥ってしまいますからね。部品を供給する会社がB社以外にも複数あれば、A社はB社以外と契約するという選択肢があるため、交渉を有利に進められます。一方で、あえて選択肢を捨てることで交渉を有利に進められる場合もあるのです。

あなたは戦国武将で敵の城を囲んでいるとします。敵軍は千人、自軍は1万。総攻撃をかければ1日で城は攻め落とせますが、敵も必死で抗戦するので自軍は5千人ほどの犠牲者が出ることが見込まれています。あなたは5千もの兵を失うのはなるべく避けたいと思っています。可能であれば戦わずして敵を降伏させたいのですが、敵もあなたの思惑を知っているため簡単には降伏しません。「降伏しなければ攻めるぞ」と脅しをかけても、敵がそれを信じなければ効果はありません。敵の城には食糧が大量にあるため、兵糧攻めも通用しません。「相手は5千の犠牲を出しても城を攻め落とすつもりだ」と敵に思わせて、降伏させるためにどうすればよいでしょうか。「戦わない」という選択肢を捨てるのです。自軍の食糧をすべて廃棄して、そのことを敵にも知らせましょう。食糧がなくなったあなたの軍勢が生き残るには、城を攻め落とすしかありません。あなたの選択肢が「戦う」しかなくったことを知った敵は、全滅を避けるために降伏せざるを得ないでしょう。

また別の例。あなたは営業部の部長で、社員の昇給を承認する権限があります。今、ある営業部員の昇給に反対しているとしましょう。その社員がいなければあなたは困りますが、まだ昇給するには早いと判断しています。しかし、社員は「自分が辞めたら部長が困る」という事実に気付いています。そのため、社員に「昇給しなければ会社を辞めますよ」と言われたら昇給を認めざるを得ません。この状況を脱するには、昇給の権限を放棄すればよいのです。社員は、新たに権限を持つことになった人物(例えば営業部長の上の役員とか人事部長とか)と交渉するかもしれません。しかし、その人たちは営業部の社員と仕事上で直接的な関りがないため、「昇給しなければ会社を辞めますよ」という脅しの効力が薄まります。

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