ミスの温床になるようなマニュアルを使っていませんか?

マニュアルは、ミスなく業務を進めるためのものです。しかし、作り方を間違えるとかえってミスの温床となってしまいます。業務を円滑に進めて、ミスのリスクを減らすマニュアル作りのポイントをいくつか紹介します。

1.断言する

日常会話では、断言を避けた遠回しな言い方が多用されます。しかし、マニュアルでは曖昧な表現は厳禁です。例えば、サッカーの試合で監督から「相手チームのA選手のドリブルに気を付けろ」と指示されても、選手はどうすればいいのかわかりません。「A選手がドリブルをしたら2人以上で守れ」など、具体的な行動を指示する必要があります。マニュアルも同様です。

「値引きを要求された場合は、即答せずに上司に相談した方がよい」という営業マニュアルがあったとします。これだと、値引き要求があったときにどうすればよいか曖昧です。もし担当者に値引き権限がないのであれば、「値引きを要求された場合は、即答せずに上司に相談する」と明確に記載します。一定の条件で担当者に決裁権を与えるのであれば、その条件を明記します。例えば、「20%以内の値引き要求であれば担当者の裁量で決裁してよい。20%を超える値引き要求の場合は、即答せずに上司に相談する」などと記載します。

2.「必ず」「絶対に」という表現を使わない

マニュアルに「電話が終わったら内容をXXXシステムに入力する」とあれば、必ず入力します。必ずやることですから、わざわざ「XXXシステムに必ず入力する」と書く必要はありません。マニュアル作成者は、「ここは重要なポイントだから『必ず』と入れておくか」と思って書いたのかもしれません。しかし、そうすると「『必ず』『絶対に』がない指示は場合によってはやらなくてもいいの?」という疑問が生じる余地が出てしまいます。「指示は必ず実行するものだから『必ず』とか『絶対に』といった表現は不要。場合によってはやらなくてもよい指示は、その条件を明記する」と覚えておきましょう。

3.現状とマニュアルを一致させる

管理者が頑張ってマニュアルを作ったものの、現場の実態とそぐわないということはよく起こります。また、マニュアルができた当初は適切な内容だったけど、時間が経過して現状と合わなくなったということもよくあります。
みなさんはこんな経験はありませんか。

「マニュアルには『見積書の内容について営業課長の承認を受ける。承認を得たら見積書をプリントアウトする』とあるけど、実際、課長の承認は省略しています」「マニュアルには『商談が終わったら内容をXXXシステムに入力する』とあるけど、今はそれに加えてYYYシステムにも入力しています」そしてマニュアルの「課長に承認を受ける」の部分は手書きの二重横線で消されている。「XXXシステムに入力する」の下には手書きで「YYYシステムにも入力!」と書かれている。

このように、マニュアルを無視したり、マニュアルにない工程を加えたりすると、様々な問題が起こります。関係者の認識違いが生じやすくなり、ミスにもつながります。また、「マニュアル通りにやらなくても大丈夫」という空気が組織内に浸透します。対処法は二つあります。一つは、マニュアルを現状に合わせて更新することです。マニュアル通りにやるよりも、現状の方が総合的に見て効率的だと判断すれば、マニュアルを更新すべきです。もう一つは、マニュアル通りに進めるように改めて指示することです。現場では「マニュアルよりもこっちの方がやりやすい」と思って裏マニュアルを作ることがあります。しかし、裏マニュアルの方がトータルのリスクが大きいという場合も多いのです。

裏マニュアルによる失敗として有名な例が、東海村JCO臨界事故です。1999年9月30日、JCO東海事業所で作業員たちが核燃料を加工していました。作業員は国に認められた正規のマニュアルではなく、裏マニュアルに従って作業をしていました。本来は溶解塔という装置を使って作業をするのですが、裏マニュアルではステンレス製のバケツを使うことになっていました。このようにマニュアル通りに作業を進めなかったことが一因となって臨界事故が起こり、日本で初めて事故被ばくによる死亡者が出るという結果になったのです(かなり端折って記載しました。詳細はネットで検索してください)。

4.マニュアル作成者と更新履歴を記載する

マニュアルを誰が作ったかという情報は重要です。記載者が不明だと、マニュアルに関して疑問が生じた際に、誰に問い合わせていいかわかりません。「なんでこんなルールがあるんだろう」と思ったときに、記載者に聞けばその根拠や経緯を知ることができます。マニュアルができた当初は、そういったことも想定して、マニュアルには記載者を明記します。
更新履歴も必須です。最新のマニュアルは何年何月何日のバージョンなのかを関係者に共有して、常に最新のマニュアルを参照できるようにしておきましょう。

今回はマニュアル作りのポイント4点を解説しました。ぜひ参考にして、マニュアルの改善にお役立てください。

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